【厚生労働省】副業する人の労働時間の管理・見直しを議論

【厚生労働省】副業する人の労働時間の管理・見直しを議論

2018年7月17日に厚生労働省の有識者検討会で「副業をする人の労働時間の管理・見直し」について議論が行われたようです。

昨年から働き方改革の一環として政府の「副業推進」や企業の「副業認可」などが騒がれていますが、副業を行った場合の「労働時間」について度々議論され世間でも注目を集めてきました。
確かに労働時間の制限を設けなければ働きすぎる人も出てきてしまいます。

中々難しい線引きになりますが、今回の有識者検討会では一体どのような議論が展開されたのでしょうか。
副業ラボでは、今回の「副業をする人の労働時間の管理・見直し」議論の要点をまとめてみました。

今回の厚生労働省の有識者検討会について

今回の厚生労働省の有識者検討会について

2018年7月17日に厚生労働省の有識者検討会は「副業をする人の労働時間の管理・見直し」について議論を行ったようです。

現行法の規定では本業と副業で働いた時間を合算している。

労働基準法 第38条(時間計算)
労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
引用元:労働基準法

今回の議論では、複数の企業を掛け持ちして働く人の労働時間を今まで通り「合算」にするのか「別々」にするのかが焦点となりました。
時間計算によっては、長時間労働を招く可能性もあるため、慎重に検討しているようです。



議論では「労働時間の管理・見直し」が焦点に

議論では「労働時間の管理・見直し」が焦点に

副業により長時間労働を招く可能性があるとすれば、現行の労働基準法の見直しを行う必要がでてきます。
先程も触れましたが、現行の労働基準法は事業場(事業所)が異なる場合でも労働時間を通算する規定となっています。

例えば・・・
1日6時間をA社で働き、B社で3時間働くとすると、法定労働時間である1日8時間を超えてしまいます。
このため、B社でははみ出た1時間の割増賃金を支払わなければならなくなります。

現行法だと上記のような問題が発生してしまい、これが副業の足かせになってしまうのではないかと指摘されています。
また、本業の事業場(事業所)と副業先が異なれば企業同士で働き手の労働時間を正確に把握することは難しくなります。

今回の議論では、このような問題も含め「現状では労働者の自己申告に頼らざるを得ない」との意見も出たようです。

労働時間の把握は「労働者の自己申告制」に頼らざるを得ない

労働時間の把握は「労働者の自己申告制」に頼らざるを得ない

今回の議論では、委員から事業場(事業場)が異なる際の労働時間の把握には「労働者の自己申告」に頼らざるを得ないという意見が出ました。
ですが、労働時間を適切に管理する責務を有している現在でも自己申告制によって様々な問題が起きているようです。

労働時間の自己申告により生じている問題

  • 割増賃金の未払い
  • 過重な長時間労働
  • 労働時間を適切に管理していない

etc…

これらの不適正な運用も目立っているようです。
労働者が自己の労働時間を自主的に管理し、申告するのは中々難しいのかもしれません。
いずれにせよ、労働時間の把握が現行法改善の焦点になると予想されます。

海外の場合、米国では労働時間を通算する規定がないがドイツやフランスは通算しているようです。
副業文化が発達している海外のスキームを参考にしてみるのが良いかもしれない。



通算を辞めると過重労働によっては過労死の恐れも発生

通算を辞めると過重労働によっては過労死の恐れも発生

本業をこなしながら副業することで心配されるのが労働時間です。
インターネットビジネスや在宅ワークのようにスキマ時間で働けるものであれば良いのですが、アルバイトやパートのように事業場(事業所)や企業に所属し、労働をこなすとなると勤務時間が発生し、過重労働に陥る可能性があります。

また、過重労働による過労死の恐れも存在します。
副業によって過労死をしてしまっては何のメリットもありません。

働き手の労働時間を曖昧に把握し、過労死してしまった場合は雇用している企業にとってもイメージダウンにつながります。
ましてや、少子高齢化により労働人口が年々減少している今日の日本にとって過労死は減らさなければならない社会問題です。

今回の議論である「副業をする人の労働時間の管理の見直し」ですが、現行法の通算をやめると働き過ぎが増えてしまう懸念もあります。
6月末には働き方改革法として「年720時間までの残業時間の上限規制」の導入が決まり、副業を推進していながらも長時間労働に追い風が吹いているようにも感じられます。

まとめ:安心して副業がしやすいような環境作りに期待

今回は厚生労働省の有識者検討会で行われた「副業をする人の労働時間の管理・見直し」の議論についてまとめさせていただきました。

今回のまとめ
  • 労働時間は事業場を異にする場合においても通算
  • 現在は労働時間は自己申告に頼らざるを得ない状況
  • 通算を辞めると長時間労働や過重労働のリスクが発生

昨今はパラレルワーク、パラレルキャリアが騒がれる世の中です。
働き方改革の一環として政府は「副業推進」し、企業は「副業認可」を試みていますが、副業者にとって働きやすい環境が整っていないのは確かなように思えます。

安心して本業と掛け持ちで副業がおこなえる環境を政府や企業が今後整えていくのに期待するばかりです。

参考元:日本経済新聞「副業する人の労働時間、見直しを議論 厚労省」